虫歯は予防出来る病気です。
予防に必要なのはまず簡単な知識です。
なんで虫歯になっちゃうの?という疑問に対して一言で言うならば、「虫歯は、酸を産生する細菌によって起こります。」というのがその答えです。
より具体的にお伝えすると、まず、歯の表面にいる細菌が食品に含まれる砂糖類(ショ糖)を分解するときに酸(主に乳酸)を産生します。
その酸によって歯の表面が脱灰(溶ける)するわけですが、そのまま一方的に溶けていくわけではなく、唾液がどんどん酸を中和して、歯が溶けていくのを防ぎ、また、溶けた歯を再石灰化(固まる)していきます。
このように、歯の表面では溶けたり固まったりを毎日繰り返しているということです。
しかし、唾液の分泌量(1日1.5リットル)や緩衝能(食後の酸性に傾いたお口の中を、中性に戻そうとする働き)は限られていることから、再石灰化(固まる)能力には限界があります。従って溶けている時間が長ければ、再石灰化能力を超えて固まり切れずに歯に穴が出来ます。
これが虫歯です。
では、虫歯の予防の為にどうしたら良いか。
考えつき易く、実行し易いのは以上の4項目でしょうか。
他にもありますが、非現実的な物も多く、あまりにも選択肢が多くても困りますよね。
ブラッシングを効果的に行う事で細菌(プラーク)を減らします。
歯ブラシだけでもうまく使えば何とかなるのですが、結構技術が必要だったりします。
道具で何とかした方が簡単です。
道具も色々有りますが、歯の形や歯並び、御本人の使い勝手など、御相談しながらサポートさせて頂きます。
まずは、こちらの砂糖と歯の表面のpHをあらわした図を御覧ください。
歯のエナメル質はpH5.5、象牙質はpH6.3以下で溶け始めますが、これらのPHを下回っている時間を短くし、再石灰化する時間を長くすることが虫歯の予防の上で重視されます。
従って、砂糖が口の中に入っている回数が重要です。
頻繁に間食をする方は要注意です。
間食の多い人は臨界pHを頻繁に下回ってしまいます。
間食を含めた食事の回数は1日5回までにすると効果が出てくるとされています。
(スウェーデン、トータルカリオロジー、B,O,Hanson、D,Ericson)
砂糖や加工でんぷん質の摂取回数を少なくする。
砂糖の入った食事や飲料を他のものに変える。
夜間の飲食は避ける(お水は大丈夫)
虫歯のリスクが低い方は食生活の大幅な見直しは不要かもしれませんが、頻繁に虫歯の治療が必要になる方の場合、生活習慣から改善していく必要はあるのではないでしょうか。
フッ素を使用します。
1900年代初頭にフッ化物の虫歯抑制作用が発見されました。
それ以降様々な形で虫歯の予防に応用されてきました。
虫歯予防において、現在最も効果的な化学物質であるとされています。
研究により以下の事がわかっています。
スウェーデンでは1952年から1962年の間に飲料水のフッ素化が行われ、7歳児で37%、14歳で27%の虫歯減少率が示されました。
その後個人の選択の自由の為、飲料水のフッ素化はやめることになりましたが、代わりに食事、口腔衛生、効果的な個別のフッ化物処置の向上を目指す方針に変わっています。
たまにフッ素の害を説く情報もありますが、非常識な量を使用しなければ安全です。
急性中毒などには通常考えられない量を使用しない限り発生しません。
私達の身の回りにあるフッ化物製品や、歯科で使用する濃度では到底起こりえない現象です。
当院ではフッ化物応方法として
などを使用しています。
これらを患者さんと相談しながら使用方法を考えていきます。
唾液は様々な役割を担っています。
その一つがpHの緩衝能です。
細菌が産生する酸によって歯の周囲のpHが下がります。
下がったpHを元に戻さないとドンドン歯が溶けていきます。
唾液が分泌されることによって、酸が薄まり、pHが元の正常値へ戻っていくことが出来ます。
実際には唾液を増やすのは容易では有りませんが、いくつかの方法が有ります。
他にも方法はありますが、いきなり2倍増える方法はありません。
生理的な反応を促すか、足りない分を補充するか、いずれかの方法になります。
御高齢や、御病気で唾液が少なくなった方などは両者を組み合わせていく必要があります。
以上ごく簡単に虫歯の予防についてお話しましたが、効果的な予防は基本的にオーダーメイドです。
「あの人が上手く行ったから私もその方法でやります。」
偶然に期待した方法ですね。
むし歯の原因や誘因は上記以外にもまだまだあります。
それらを一般の方に全て網羅して頂くのは歯科の初期教育から始めないと無理ですから、実際には不可能です。
その部分をフォローアップする為に私たちがいます。